|公開日 2019.6.1


1|出題傾向と合格対策

1 テキストをシッカリ読む

借地借家法は、土地・建物の賃貸借に関する民法の特別法です。
民法では保護が不十分な土地・建物の賃借権が、借地借家法によって修正強化されていますので、民法の賃貸借と対比することによってその相違を明確に理解できます。

民法の賃貸借とは違って、借地借家法は、基本的には「覚えればいいだけ」の暗記中心の科目です。
借地権=土地賃貸借から1問、借家権=建物賃貸借から1問というのが定番です。ただ、平成27年のように2問とも建物賃貸借というときもありました。
いずれにせよ、ここで1点はとるようにしたいものです。

借地借家法は60条から成りますが、出題範囲は実質40条です。
条文数が少ない割には難しい印象を受けるのは、何といっても条文の文言が長いからで、正直、読んでいるうちについウトウトしてきます。条文が長いためか問題文も長くなる傾向にあります。

試験時間は2時間しかありませんから、過去問練習で「長文」に慣れておくことが非常に重要です。

出題は「借地権の効力」「存続期間」「定期借地権」「更新」「建物賃貸借の効力」「定期建物賃貸借」「解約申入れ」など。
類似問題は、借地権は非常に少なく、借家権で少しあるくらいです。

借地借家法を理解するコツは、「大家から家賃の値上げを要求されている」「更新が拒絶されそうだ」など、自分に差し迫った問題として、あるいは家族・友人の相談にのるつもりで考えてみることにあります。

応用問題よりも基本問題がほとんどですから、テキストを地道に読んで基礎知識を積み重ねながら過去問練習をくり返す、この正攻法で十分です。

2|借地|直近7年間の出題テーマ


 平成30年|問11 
  • 事業用建物目的の賃貸借契約
  • 居住用建物における存続期間等の特約
  • 普通借地権の存続期間と公正証書
  • 建物保存登記の名義人と借地権対抗力
 平成29年|問11 
  • 利用目的が異なる二重賃貸と対抗関係
  • 利用目的が異なる賃借権の存続期間
  • 賃料の増減額請求
  • 定期借地権の書面性
 平成28年|問11 
  • 建物保存登記の名義人と借地権対抗力
  • 実際と相違した建物登記の対抗力
  • 公正証書による定期借地権と建物収去
  • 債務不履行解除と建物買取請求
 平成27年 
 出題なし

 平成26年|問11 
|土地賃貸借における相違について
 ・建物所有目的とそれ以外の場合|

  • 存続期間(書面と口頭)
  • 第三者対抗要件
  • 解約の申入れ
  • 中途解約
 平成25年|問11 
  • 非建物所有借地権と地代等増減額請求
  • 契約の更新請求と遅滞のない異議
  • 二筆以上の土地借地権の対抗力の範囲
  • 建物再築による借地権の存続期間
 平成24年|問11 
  • 建物の表示登記と借地権の対抗力
  • 滅失建物における借地権の対抗力
  • 適法な転借権の対抗力
  • 土地の一時使用と建物買取請求

3|借地|試験問題|直近7年間

1 平成30年度

 平成30年|問11 
AとBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で賃貸借契約(以下この問において「本件契約」という。)を締結する場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

 本件契約が専ら事業の用に供する建物の所有を目的とする場合には、公正証書によらなければ無効となる。

 本件契約が居住用の建物の所有を目的とする場合には、借地権の存続期間を20年とし、かつ、契約の更新請求をしない旨を定めても、これらの規定は無効となる。

 本件契約において借地権の存続期間を60年と定めても、公正証書によらなければ、その期間は30年となる。

 Bは、甲土地につき借地権登記を備えなくても、Bと同姓でかつ同居している未成年の長男名義で保存登記をした建物を甲土地上に所有していれば、甲土地の所有者が替わっても、甲土地の新所有者に対し借地権を対抗することができる。

2 平成29年度

 平成29年|問11 
A所有の甲土地につき、平成29年10月1日にBとの間で賃貸借契約(以下「本件契約」という。)が締結された場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

 Aが甲土地につき、本件契約とは別に、平成29年9月1日にCとの間で建物所有を目的として賃貸借契約を締結していた場合、本件契約が資材置場として更地で利用することを目的とするものであるときは、本件契約よりもCとの契約が優先する。

 賃借権の存続期間を10年と定めた場合、本件契約が居住の用に供する建物を所有することを目的とするものであるときは存続期間が30年となるのに対し、本件契約が資材置場として更地で利用することを目的とするものであるときは存続期間は10年である。

 本件契約が建物所有を目的として存続期間60年とし、賃料につき3年ごとに1%ずつ増額する旨を公正証書で定めたものである場合、社会情勢の変化により賃料が不相当となったときであっても、AもBも期間満了まで賃料の増減額請求をすることができない。

 本件契約が建物所有を目的としている場合、契約の更新がなく、建物の買取りの請求をしないこととする旨を定めるには、AはあらかじめBに対してその旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

3 平成28年度

 平成28年|問11 
Aが居住用の甲建物を所有する目的で、期間30年と定めてBから乙土地を賃借した場合に関する次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、Aは借地権登記を備えていないものとする。

 Aが甲建物を所有していても、建物保存登記をAの子C名義で備えている場合には、Bから乙土地を購入して所有権移転登記を備えたDに対して、Aは借地権を対抗することができない。

 Aが甲建物を所有していても、登記上の建物の所在地番、床面積等が少しでも実際のものと相違している場合には、建物の同一性が否定されるようなものでなくても、Bから乙土地を購入して所有権移転登記を備えたEに対して、Aは借地権を対抗することができない。

 AB間の賃貸借契約を公正証書で行えば、当該契約の更新がなく期間満了により終了し、終了時にはAが甲建物を収去すべき旨を有効に規定することができる。

 Aが地代を支払わなかったことを理由としてBが乙土地の賃貸借契約を解除した場合、契約に特段の定めがないときは、Bは甲建物を時価で買い取らなければならない。

4 平成27年度

 出題なし

5 平成26年度

 平成26年|問11 
甲土地の所有者が甲土地につき、建物の所有を目的として賃貸する場合(以下「ケース①」という。)と、建物の所有を目的とせずに資材置場として賃貸する場合(以下「ケース②」という。)に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。

 賃貸借の存続期間を40年と定めた場合には、ケース①では書面で契約を締結しなければ期間が30年となってしまうのに対し、ケース②では口頭による合意であっても期間は40年となる。

 ケース①では、賃借人は、甲土地の上に登記されている建物を所有している場合には、甲土地が第三者に売却されても賃借人であることを当該第三者に対抗できるが、ケース②では、甲土地が第三者に売却された場合に賃借人であることを当該第三者に対抗する方法はない。

 期間を定めない契約を締結した後に賃貸人が甲土地を使用する事情が生じた場合において、ケース①では賃貸人が解約の申入れをしても合意がなければ契約は終了しないのに対し、ケース②では賃貸人が解約の申入れをすれば契約は申入れの日から1年を経過することによって終了する。

 賃貸借の期間を定めた場合であって当事者が期間内に解約する権利を留保していないとき、ケース①では賃借人側は期間内であっても1年前に予告することによって中途解約することができるのに対し、ケース②では賃貸人も賃借人もいつでも一方的に中途解約することができる。

6 平成25年度

 平成25年|問11 
賃貸借契約に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

 ゴルフ場経営を目的とする土地賃貸借契約については、対象となる全ての土地について地代等の増減額請求に関する借地借家法第11条の規定が適用される。

 借地権の存続期間が満了する際、借地権者の契約の更新請求に対し、借地権設定者が遅滞なく異議を述べた場合には、借地契約は当然に終了する。

 二筆以上ある土地の借地権者が、そのうちの一筆の土地上に登記ある建物を所有し、登記ある建物がない他方の土地は庭として使用するために賃借しているにすぎない場合、登記ある建物がない土地には、借地借家法第10条第1項による対抗力は及ばない。

 借地権の存続期間が満了する前に建物が滅失し、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を建築した場合、借地権設定者が異議を述べない限り、借地権は建物が築造された日から当然に20年間存続する。

7 平成24年度

 平成24年|問11 
賃貸借契約に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。

 建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において、借地権の登記がなくても、その土地上の建物に借地人が自己を所有者と記載した表示の登記をしていれば、借地権を第三者に対抗することができる。

 建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において、建物が全焼した場合でも、借地権者は、その土地上に滅失建物を特定するために必要な事項等を掲示すれば、借地権を第三者に対抗することができる場合がある。

 建物の所有を目的とする土地の適法な転借人は、自ら対抗力を備えていなくても、賃借人が対抗力のある建物を所有しているときは、転貸人たる賃借人の賃借権を援用して転借権を第三者に対抗することができる。

 仮設建物を建築するために土地を一時使用として1年間賃借し、借地権の存続期間が満了した場合には、借地権者は、借地権設定者に対し、建物を時価で買い取るように請求することができる。


(この項終わり)